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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

主婦は襖を開いて置いて、それが合図なのであろう。一種異様の咳払いをした。すると、これはどうだ。押入れの天井にポッカリと穴があいて、そこから真赤な電燈の光りが射して来た。天井板と見せかけて、その実上げ蓋になっているのだ。

「だが、この家は平家建てだ。二階がある筈はないが」

と思っていると、天井からスルスルと縄梯子が下り、それを伝って、一人の小女が降りて来たが、召使であろう。彼に一礼してその場を立去った。

「お危うございますが、どうかこれを」

と主婦が云うままに、青木はその縄梯子を昇った。

上って見ると、そこに奇妙な部屋がある。床は畳だけれど、天井も四方も一様の新しい板壁で、桝をふせた様に窓も床の間も押入れもない。その癖、部屋の真中には新しい………………………、大きな丸胴の桐の火入れには、桜炭が赤々と燃え、銀瓶がたぎっている。天井からは小型ではあるが贅沢な装飾電燈が下っている。その電燈の色が血の様に真赤なのは、何か理由があるのであろうか。

分った分った。平家建ての屋根裏に、こんな密室を新しく作ったのだ。実に名案である。外から見たのでは、普通の平家建だから、下の部屋部屋に異状がなければ、とがめる者もあるまい。