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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

相手の女も決してこんな場所で媾曳する様な柄ではない。女が「宿」と云った。そこで逢ってから、男が女を送って来たのか女が男を送って来たのか(地理の関係から云って、多分前の方だが)「宿」で分れ去るに忍びなかったものであろう。

「あの人にすまん」というのは、女に定まった亭主でもあるのか。「あの家へ手紙を下さい」と云ったのを見ると、自宅へ手紙が来ては悪い事情があるのだろう。どう考えても有夫姦だ。それに、男は東京から態々逢いに来ている。

「イヤハヤ、お安くない事だわい」

まだ何事も気附かぬ青木は、この思いがけぬ収獲に、ひどく嬉しがっていたのだが。……

やがて男女が別れて、男が先に彼の方へ降りて来る様子に、ハッとして、思わず十数歩あと戻りした青木が、丁度常夜燈の下で、ひょいと振り向く出会頭に、近づいた男の顔が電燈に照らされて、ハッキリ分った。それが、何という意外なことだ。東京にいるとばかり思っていた、かの品川四郎の顔ではないか。

「ア、品川君」

思わず口をついて出た。

「エ?」

相手も立止ったが、妙な顔をしてジロジロ青木の顔を眺めている。気拙いのだなと思って、何も知らぬ体にして、