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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
欧洲の政風人情
の台所で米の飯を炊くことも出来ず、とう/\仕舞には米を始め諸道具一切の雑物を、接待掛りの下役のランベヤと云う男に進上して、唯貰て貰うたのも可笑しかった。
先ずこんな塩梅式だから、吾々一行の失策物笑いは数限りもない。シガーとシュガーを間違えて烟草を買いに遣て砂糖を持て来るもあり、医者は人参と思て買て来て生姜の粉であったこともある。又或るときに三使節中の一人が便所に行く、家来がボンボリを持て御供をして、便所の二重の戸を明放しにして、殿様が奥の方で日本流に用を達すその間、家来は袴着用、殿様の御腰の物を持て、便所の外の廊下に平き直てチャント番をして居るその廊下は旅館中の公道で、男女往来織るが如くにして、便所の内外瓦斯の光明昼よりも明なりと云うから堪らない。私は丁度其処を通り掛て、驚いたとも驚くまいとも、先ず表に立塞がって物も言わずに戸を打締めて、夫れからそろ/\その家来殿に話したことがある。
欧洲の政風人情政治上の事に就ては竜動、巴里等に在留中、色々な人に逢うて色々な事を聞たが、固よりその事柄の由来を知らぬから能く分る訳けもない。当時は仏蘭西の第三世ナポレヲンが欧洲第一の政治家と持囃されてエライ勢力であったが、隣国の普魯士も日の出の新進国で油断はならぬ。