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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
御幣担ぎを冷かす
飲めるからとワイワイ云たのは随分乱暴だけれども、それが自から切諫になって居たこともあろう。
御幣担ぎを冷かす同窓生の間には色々な事のあるもので、肥後から来て居た山田謙輔と云う書生は極々の御幣担で、しの字を言わぬ。その時、今の市川団十郎の親の海老蔵が道頓堀の芝居に出て居るときで、芝居の話をすると、山田は海老蔵のよばいを見るなんて云う位な御幣担だから、性質は至極立派な人物だけれとも、如何も蘭学書生の気に入らぬ筈だ。何か話の端には之を愚弄して居ると、山田の云うに「福澤々々、君のように無法な事ばかり云うが、マア能く考えて見給え。正月元日の朝、年礼に出掛けた時に、葬礼に逢うと鶴を台に戴せて担で来るのを見ると何方が宜いかと云うから、私は、「夫れは知れた事だ。死人は喰われんから鶴の方が宜い。けれども鶴だって乃公に喰わせなければ死人も同じ事だと答えたような塩梅式で、何時も冷かして面白がって居る中に、或るとき長与専斎か誰れかと相談して、彼奴を一番大に遣てやろうじゃないかと一工風して、当人の不在の間にその硯に紙を巻いて位牌を拵えて、長与の書が旨いから立派に何々院何々居士と云う山田の法名を書いて机の上に置て、当人の飯を喰う茶碗に灰を入れて線香を立てゝ位牌の前にチャント供えて置た所が、帰て来て之を見て忌な顔をしたとも何とも、真青