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ふくおうじでん

福翁自伝

福沢 諭吉

02 福翁自伝

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页

青空文庫

独立の手本を示さんとす

勝負は時の運に由る、負けても恥かしいことはない、議論が中らなかっても構わないが、遣傷なったらその身の不運と諦らめて、山に引込むか、寺の坊主にでもなって、生涯を送れば宜いと思えども、中々以て坊主どころか、洒蛙々々と高い役人になって嬉しがって居るのが私の気に喰わぬ。扨々忠臣義士も当てにならぬ、君臣主従の名分論も浮気なものだ、コンな薄ぺらな人間と伍を為すよりも独りで居る方が心持が宜いと説を極めて、初一念を守り、政治の事は一切人に任せて、自分は自分だけの事を勉めるように身構えをしました。実は私の身の上に何も縁のないことで、入らざるお世話のようだが、前後の事情を能く知て居るから、忠臣義士の成行を見るとツイ気の毒になって、意気地なしのように腰抜のように、思うまいと思ても思われて堪らない。全く私の癇癪でしょうが、是れも自然に私の功名心を淡泊にさせた原因であろうと思われます。

独立の手本を示さんとす第四には、勤王佐幕など云う喧しい議論は差置き、維新政府の基礎が定まると、日本国中の士族は無論、百姓の子も町人の弟も、少しばかり文字でも分る奴は皆役人になりたいと云う。仮令い役人にならぬでも、兎に角に政府に近づいて何か金儲でもしようと云う熱心で、その有様は臭い物に蠅のたかるようだ。