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ふくおうじでん

福翁自伝

福沢 諭吉

02 福翁自伝

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页

青空文庫

老余の半生

仕官を嫌う由縁

御座ると云う所を持込んだ所が、その御隠居様も若い時には直接に身に覚えがある。この話を聞て心を動かさずには居られない。恰も豁然発明した様子で、ソレから福澤を近づける気になって、次第々々に奥向の方に出入の道が開けて、御隠居様を始め所謂御上通りの人に逢うて見れば、福澤の外道も唯の人間で、角も生えて居なければ尻尾のある者でもない、至極穏かな人間だと云う所からして、段々懇親になったと云うその話は、程経て後に内々嶋津から聞きました。シテ見ると一夫一婦の説も隠然の中には随分勢力のあるもので、就ては今の世に多妻の悪弊を除て文明風にするなんと論ずるは野暮だと云うような説があるけれども、畢竟負借みの苦しい遁げ口上で取るに足らない。一夫一婦の正論決して野暮でない、世間の多数は同主義で、殊に上流の婦人は悉く此方の味方であるから、私の身がこの先き何時まで生きて居るか知れぬけれども、有らん限りの力を尽して、前後左右を顧みずドンな奴を敵にしても構わぬ、多妻法を取締めて、少しでもこの人間社会の表面だけでも見られるような風にして遣ろうと思て居ます。

老余の半生

仕官を嫌う由縁私の生涯は終始替ることなく、少年時代の辛苦、老後の安楽、何も珍らしいことはない。