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ふくおうじでん

福翁自伝

福沢 諭吉

02 福翁自伝

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页

青空文庫

事態いよ/\迫る

誠に謂れのない話で、丸でその趣は今の西洋諸国の政府が支那人を威すと同じ事で、政府は唯英仏人の剣幕を見て心配する計り。私には能くその事情が分る、分れば分るほど気味が悪い。

事態いよ/\迫る是れはいよ/\遣るに違いないと鑑定して、内の方の政府を見れば何時迄も説が決しない。事が喧しくなれば閣老は皆病気と称して出仕する者がないから、政府の中心は何処に在るか訳が分らず、唯役人達が思い/\に小田原評議のグヅ/\で、愈よ期日が明後日と云うような日になって、サア荷物を片付けなければならぬ。今でも私の処に疵の付た箪笥がある。愈よ荷物を片付けようと云うので箪笥を細引で縛て、青山の方へ持て行けば大丈夫だろう、何も只の人間を害する気遣はないからと云うので、青山の穏田と云う処に呉黄石と云う芸州の医者があって、その人は箕作の親類で、私は兼て知て居るから、呉の処に行てどうか暫く此処に立退場を頼むと相談も調い、愈よ青山の方と思うて荷物は一切拵えて名札を付けて担出す計りにして、そうして新銭座の海浜にある江川の調練場に行て見れば、大砲の口を海の方に向けて撃つような構えにしてある。是れは今明日の中にいよ/\事は始まると覚悟を定めた。