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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
母と直談
迚も叔父さんに賛成して貰おうと云うことは出来そうにもしないが、私が心に思って居れば自から口の端にも出る。出れば狭い所だから直ぐ分る。近処辺りに何処となく評判する。平生私の処に能く来るお婆さんがあって、私の母より少し年長のお婆さんで、お八重さんと云う人。今でも其の人の面を覚えて居る。つい向うのお婆さんで、或るとき私方に来て、「何か聞けば諭吉さんは又大阪に行くと云う話じゃが、マサカお順さん(私の母)そんな事はさせなさらんじゃろう、再び出すなんと云うのはお前さんは気が違うて居はせぬかと云うような、世間一般先ずソンナ風で、その時の私の身の上を申せば寄辺汀の捨小舟、まるで唄の文句のようだ。
母と直談ソコデ私は独り考えた。「是れは迚も仕様がない。唯頼む所は母一人だ。母さえ承知して呉れば誰が何と云うても怖い者はないと。ソレカラ私は母にとっくり話した。「おッ母さん。今私が修業して居るのは斯う云う有様、斯う云う塩梅で、長崎から大阪に行て修業して居ります。自分で考えるには、如何しても修業は出来て何か物になるだろうと思う。この藩に居た所が何としても頭の上る気遣はない。真に朽果つると云うものだ。