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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
下ノ関の攘夷
人間の幸不幸は何処に在るか分らない、所謂因縁でしょう。この一事でも王政維新は私の身の為めに難有い。夫れは扨置き、今日でも彼の書たものを見れば、文久三年の事情はよく分て、外交歴史の材料にもなり、頗る面白いものであるが、何分にも首には易えられず焼て仕舞たが、若しも今の世の中に誰か持て居る人があるなら見たいものと思います。
下ノ関の攘夷夫れから世の中はもう引続いて攘夷論ばかり、長州の下ノ関では只和蘭船を撃つばかりでなく、その後亜米利加の軍艦にも発砲すれば、英吉利の軍艦にも発砲すると云うような訳けで、到頭その尻と云うものは英仏蘭米四ヶ国から幕府に捩込んで、三百万円の償金を出せと云うことになって、捫着の末、遂にその償金を払うことになった。けれども国内の攘夷論はなか/\収まりが付かないで、到頭仕舞には鎖国攘夷と云うことを云わずに新に鎖港と云う名を案じ出して、ソレで幕府から態々池田播磨守と云う外国奉行を使節として仏蘭西まで鎖港の談判に遣わすと云うような騒ぎで、一切滅茶苦茶、暗殺は殆んど毎日の如く、実に恐ろしい世の中になって仕舞た。爾う云う時勢であるから、私は唯一身を慎んでドウでもして災をれさえすれば宜いと云うことに心掛けて居ました。