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ふくおうじでん

福翁自伝

福沢 諭吉

02 福翁自伝

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页

青空文庫

長官に対して不従順

て居る中に、段々時勢が切迫して来て、或日中嶋三郎助と云う人が私の処に来て、ドウして引込んで居るか。「斯う/\云う次第で引込で居る。「ソリャァどうも飛んだ事だ、この忙しい世の中にお前達が引込で居ると云うことがあるか、直ぐ出ろ。「出ろッたって出さぬものを出られないじゃないか。「宜しい、拙者がすぐに出して遣ると云て、夫れからその時に稲葉美濃守と云う老中があって、ソコへ中嶋が行て、福澤を引込まして置かないで出すようにしたら宜かろうと云うような事になって、夫れから再び出ることになった。その美濃守と云うのは旧淀藩士で、今日は箱根塔沢に隠居して居るあの老爺さんのことで、中嶋三郎助は旧浦賀の与力、箱館の戦争に父子共に討死した立派な武士で、その碑は今浦賀の公園に立てある。

長官に対して不従順全体今度の亜米利加行に就て斯く私が擯斥されたと云うのは、何か私が独り宜いようにあるけれども、実を申せば左様でない、と云うのは元と私は亜米利加に行きたい/\と云て小野友五郎に頼み、同人の信用を得て随行員となった一人であれば、一切万事長者の命令に従いその思う通りの事をしなければ済まない訳けだ。