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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
に焼延びて居る。長与は如何したろうかと心配したものゝ、迚も捜す訳けに行かぬ。間もなく日が暮れて夜になった。もう夜になっては長与の事は仕方がない。「火事を見物しようじゃないかと云て、その火事の中へどん/\這入て行た。所が荷物を片付けるので大騒ぎ。それからその荷物を運んで遣ろうと云うので、夜具包か何の包か、風呂敷包を担いだり箪笥を担いだり中々働いて、段々進で行くと、その時大阪では焼ける家の柱に綱を付けて家を引倒すと云うことがあるその網を引張って呉れと云う。「よし来たとその綱を引張る。所が握飯を喰せる、酒を飲ませる。如何も堪えられぬ面白い話だ。散々酒を飲み握飯を喰て八時頃にもなりましたろう。夫れから一同塾に帰た。所がマダ焼けて居る。「もう一度行こうではないかと又出掛けた。その時の大阪の火事と云うものは誠に楽なもので、火の周囲だけは大変騒々しいが、火の中へ這入ると誠に静なもので、一人も人が居らぬ位。どうもない。只その周囲の処に人がドヤ/″\群集して居るだけである。夫れゆえ大きな声を出して蹴破って中へ飛込みさえすれば誠に楽な話だ。中には火消の黒人と緒方の書生だけで大に働いた事があると云うような訳けで、随分活溌な事をやったことがありました。