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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

「倭文子さん。ちょっとお顔をお上げになって。」

そういって。京子は倭文子の顔を上げさせ、その下にある牌を取り出した。牌がぬれているので、倭文子が泣いていることが初めてわかった。

さすがに、京子も牌をかきまわしていた手を止めた。

「まあ。倭文子さん、泣いていらっしゃるの。」

そういわれると、倭文子はまた悲しくなって、止まっていた涙が、新しい勢いで、ボトボトと卓の上に落ちた。

男達二人は、もう口がきけなかった。二人とも、てれてしまって、やけに牌をかきまわしつづけていた。白々しい沈黙がつづき、牌がふれ合うひびきだけがその静けさを破った。

「つづけて、おやりになる。およしになる?」

京子が、しばらくして倭文子にきいた。

「わたし、もうよしますわ。」

倭文子の声には、涙が溢れるほどふくまれていた。

「じゃ、よしましょうね。」

京子は、男達にいった。そして自分の前に、山とつまれていた点数の札を、ガチャガチャかき廻した。

「まあ。わたしこんなにあるわ。」

「どうも我々の及ぶところでありません。」

今井が、冗談に頭を下げた。

「倭文子さん。いかがです、頭痛でもなさるんじゃありませんか。