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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

四

「そうかな。これだって、品行方正ですよ。」

「そんなに、ムキになって弁解なさるから、なお怪しまれるのよ。」

「おやおや。」

「宗ちゃん。あなたが、見つかったの。じゃ、ちゃんと鬼になりなさい。いい、そこに坐っているのですよ。さあかくれましょう。」

姉にいわれて、宗三は、不平らしく母の陰にうずくまった。

四

村川は、一番後に夫人の居間を出た。夫人と、二言三言、世間話をしていたからである。洋館へ来た時、京子と倭文子の影は見えなかった。美智子が、二階で「まあだだよ!」と連呼しているのを見れば、皆二階へ上ったのだろう。

皆のいる二階へ上るのも変だし、それかといって、かくれ場所を本気に探すのも、馬鹿馬鹿しいし、村川は、座敷の安楽椅子に腰をかけて、ぼんやりしていると、

「誰もよしといってくれないんだな。いいよ、いいよ。よしと聞いたことにするから。」

と叫びながら、廊下を走って来る宗三のけたたましい足音が近づいた。

村川も、あわてて立ち上った。少くとも体裁だけにでも、かくれなければならない。咄嗟に周囲を見廻したが、テーブルの下、椅子の陰、どこも一目で見透しである。

ただ、部屋の一隅の窓掛の帯がはずれて、ひだの多い布が重々しく、床にたれているのを見た。