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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
五
父は京子の女らしい心持に、うごかされたと見え、京子が箱根へ行くことをゆるした。
五
最初の電報は、二人ともキトクと報じていた。そのときは、京子は完全に自分がたたきつけられたことを感じた。二人が、とうてい自分のどうすることも出来ない世界へ行って、相愛の凱歌をあげているのを感じた。そして彼女は、一生二人の凱歌を耳にして、生きて行かなければならぬような気がした。それは彼女としても、たまらない苦痛だった。だが、その次の電報は、倭文子の死を報じ、村川のタスカルミコミを伝えた。京子は、それによって蘇った。二人の自分を征服しようとした計画は、半ば失敗したのだ。彼等の勝利は、完全ではないのだ。いま、まさしく挫折したのだ。
「それご覧なさい!」
と、京子は心の中で、つぶやいた。彼女の良心を押しのけて、低く低くつぶやいた。
出発する間際になっては、村川のケイカヨロシと報ずる電報が来た。京子の心は明るくなった。うなだれていた彼女の鶏冠は、だんだん元のように、立ち直り始めた。
京子の父が、政党関係から警察方面へ早く手をまわしたので、事件は新聞社の通信員の耳目に触れることを完全に防いだ。