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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
二
二人は、だまっていた。村川は、やっと口を開いた。
「どうもすみませんでした。」
「すみませんもないものだわ。いやな村川さん。いきなり接吻なんかしてさ。」
それは、倭文子のつつましい声とは、似ても似つかなかった。まぎれもない京子の高い華やかな声である。
村川は心の中でアッと悲鳴をあげた。
二
村川は、いきなり千尺の断崖を、逆さまに投げ落されたような気がした。彼の意識も感情も、めちゃくちゃに混乱した。名状しがたい悪感が、全身を伝わり、手足がわなわなと震えた。彼は、知らずに毒を含んだ人のように、口中のつばを吐き出したかった。
それは、まぎれもなく京子であった。闇の中ではあるが、髪の格好といい、両肩の容子といい、まぎれもなく京子である。
何という取り返しのつかない恐ろしい間違いをしたのだと思うと、村川は腸がちぎれるような苦痛を感じた。彼は足下の地が裂けて、自分とこの失策とを一緒に呑んでくれればいいとさえ思った。
だが京子には村川の心持はちっとも伝わっていなかった。彼女は初めて、男性から受けた接吻のために、スッカリ昂奮し切っているらしかった。
「村川さん、わたし、怒ってはいないことよ。