轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
九
こんな手紙が、世の中に存在していることが奇蹟だった。
「倭文子さんが、この覚悟なら、京子が逆さまになったって、恐くないぞ、見事に倭文子さんと結婚してあの高慢ちきな京子を、ギャフンといわせてやろう。」
彼は心の中でそう叫びながら、部屋の中を飛び廻った。
九
それでも、村川ははずみ切った心を押えて、十時十五分前まで部屋にいた。それまで、待つ事はかなり苦しいことだった。彼は足音をしのばせながら、階段を降りると、洋館の玄関のドアをソッとあけて外へ出た。
日本館の台所には、女中達がまだ起きていた。話声のする窓下を通って、奥庭へ出た。
満月の夜は、遠く過ぎて、晴れた初夏の夜であるが、月はまだ出ていなかった。欅の梢越しに洗われたような星空がはるばるとかかっていた。花の香か樹の新芽かが、夜の闇にほのぼのと香っていた。白いさつきの花が白じらと咲きみだれていた。しかし、恋人とのランデブーはハッキリ相手の顔を見合せるまでは、喜びよりも不安の方が先に立つものだ。どんな堅い約束を交していても、しっかり手と手を握り合うまでは安心が出来なかった。まして、村川はこの前の夜の会合に、取り返しのつかぬ失敗をしていたから。