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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
二
「いつかの指輪なおしてもらうの。」
「一人で。」
「いけない?」
「倭文子さんと、いらっしゃいよ。」
「倭文子さんなんかいや!」
「じゃ、暮れない中に帰っていらっしゃい。」
京子は、自分の羽織と着物と帯との一番よい配合を考えて、盛装した。
二
京子は、白山から電車に乗った。出かける前、電話で知らせようかと思ったが、不意に村川を驚かしたい気持もあったので、電話はかけないで家を出た。
彼女は、盛装すればするほど、美しくなる顔だった。オールバックにも七三にも飽きた彼女は、真中から二つに割っていた。鼻が高く、目が大きくクッキリと白い顔には、古代紫の霞模様の地紋のあるシャルムーズ縮緬の羽織が、ぴったりとからだについていた。
乗客の視線が、自分の身体にふりそそぐのを感じながら、彼女は村川と一緒に、銀座の宵を散歩する幸福を、いろいろに想像していた。
だが、京子が大手町で降り、今井商事株式会社のあるビルディングに入り、そのエレベーターで胸を躍らせながら吊り上げられていたとき、すぐそれと並んだもう一つのエレベーターで、村川が倭文子と会うために、胸を躍らせながら吊り下げられていたのを、夢にも知らなかった。