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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

五

」

倭文子は、宮田と二間もはなれて長く使わないらしいストーブの横にある安楽椅子に腰をかけた。

「一体京子さんは、何の買物に行ったのでしょうかな。」

「何でございますかしら。」

倭文子は、顔も十分にあげないで、低く小さい、中途で消えてなくなりそうな声で答えた。

五

七時がなると別荘番の女房が上って来た。

「どうしたのでございましょうか。まだお帰りになりませんね。ご飯はお二人だけでも先へ差しあげましょうか。」

倭文子は知らぬ男と、差し向いでご飯をたべることは考えてみるだけでも、胸につかえた。

「わたし、京子さんのお帰りになるまで、お待ちしますわ。」

「そうでございますか。あなた様は?」

女房は宮田に聞いた。

「僕もまだたべたくありません。ご一緒でけっこうです。」

「じゃ、しばらくお待ちしましょうか。もうおっつけお帰りになることでございましょう。」

そう言って女房は下へ降りて行った。

また、しらじらと時間が流れた。倭文子は、だまっていつまでもうつむいていた。寝室へ行ってしまおうかとも思ったが、それではあまりに相手に悪いと思うので、倭文子は身体がしめつけられるような、きまりのわるさ、窮屈さをこらえていた。