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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

七

恐らく泣いているのであろう。

「まだ、おやすみにならない。」

「ええ。」

倭文子は、顔を上げずにうなずいた。

「ちゃんとお休みになったらどう。」

「ええ。」

「羽織だけでも、お脱ぎになったらどう。脱がせてあげましょうか。」

京子は、やさしく寄り添おうとした。

「いいえ。わたし自分でぬぎますわ。」

「そう。」

倭文子は、ちょっと顔を持ち上げて、羽織をぬいだ。電灯のせいか。倭文子の顔は真青だった。

「早く、お休みになって、頭を休めるといいのよ。」

そういい捨てて、京子は部屋を出た。だが、彼女はドアの内側のかぎ穴に入れてあったかぎを、そっとひき出した。そして、外へ出てドアをしめると、音のしないようにかぎ穴にかぎをさし入れてそっとまわした。

七

ポカポカした、この日和に何しに来た。

コンコンないて来たばかりよ

京子は、そんな歌を歌いながら、部屋の中へ入って来た。

「村川さん。いらっしゃい。」

そういって、彼女は改めて村川にあいさつした。

「何です。今お歌いになっていた歌は。」

「むかし幼稚園で覚えた歌を、ひょっくり思い出したのよ。(ソリャウソだろう、家の庭でケッケッ鳴いてるのが、欲しいのだろう)というのよ。