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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

五

だが、彼女はそこで、岩のわれ目に片足をとられたと見え、それをぬこうとしてあせっていた。

宮田は、やっとのことで幾度目かに倭文子の肩口をつかんだ。

宮田は、倭文子の肩口をつかんだまま物がいえなかった。

「はなして下さい。」

倭文子は、はげしく身をもだえた。

「いいえ。放しません。」

「はなして下さい! はなして下さい。」

倭文子は、身震いしながら、汚らわしげに宮田を振りはなそうとした。

「僕が、あやまります。どうぞ、一度だけ帰って下さい。」

宮田は、頭を幾度も下げた。

「いいえ。いいえ。」

倭文子は、宮田を振りはらって、すぐにでも海へ飛び入りそうな擬勢を示した。

五

そこはともすれば潮のしぶきが飛びかかるほど、海に近かった。倭文子は、岩の上にぴったり身体をくっつけたままはなれなかった。

「もう、決してあんなことはいいません。どうぞお帰りになって下さい!」

宮田は、両手をつかんばかりに頭を下げた。倭文子は、白く死面のようになった顔に、真赤な唇をぐっとかみしめていた。そして、少しもじっとしていないで、宮田に取られた右の手を振りほどこうとして、身をもがいていた。彼女のかぼそい全身が、蛇のようにうごめきながら、宮田に反抗した。