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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

「宮田さんは、駄目でしょうか。」

「案外、先まわりして別荘へ帰っているかもしれませんよ。」

「でも、いよいよ駄目でしたら。」

「まあ! そんなことは考えないことにしましょう。」

二人の疲れ切った身体に、不安がヒタヒタとかぶさって来た。

「ちょっと待っていて下さい! わたし、家の容子を見て来るわ。まあ、こんなに袖口がほころびているわ。」

倭文子は、門の所へ村川を待たせると、身づくろいしながら、玄関を上って行った。

二階へ上る彼女の姿を、村川はいじらしくガラス戸越しに見ていた。彼女はすぐまた玄関へ現れた。

「宮田さん帰っていないの!」

彼女は、絶望したような、そのくせ邪魔者のないのを喜ぶようにいった。

「お上りなさいませ!」

「大丈夫ですか。」

「大丈夫ですわ。もう別荘番の人達は寝たらしいわ、ちゃんと戸締りがしてありますの。」

村川は、倭文子と一緒に階段を上った。たとえ、どんな犠牲を払ったにしろ、彼女と一緒にこうして、同じ家に一夜を明し得るかもしれぬことはうれしかった。たとえ、明日にはどんなに恐ろしいことが待っていようとも。

倭文子は、二階へ上ると、ちょっと思案した。