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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
二
きちが、蒼い顔をして玄関へ出迎えた。
「まだ、帰って来ない?」
「まあどうしたのでございましょうか。」
京子は、それに答えないで、階段をかけ上った。そして、自分達の部屋のドアをあけて、中へかけ込んだ。一番に倭文子の寝台の周囲を見まわした。そこに倭文子の持物は、何一つ残っていなかった。その上、彼女の衣類を入れたスーツケースが、向うのソファの上から影をかくしていた。
「駆落ち?」
京子は、頭の中で考えてみた。だが、宮田と倭文子とがエロープするような原因は、何一つ考えられなかった。
彼女は、自分達の部屋を出ると、向う側の宮田の部屋を見た。きちんとしかれていた寝床の傍のみだれ箱の中に、宮田の持物全部、時計や財布までが入れてあった。
「心中でもなすったのではございませんか。」
「馬鹿なことをおいいでないよ。」
そういって、京子はきちをたしなめたものの、自分の頭にもそれ以上に合理的な想像は浮んでこなかった。
二
京子の頭の中の想像の輪は、どうしてもつながらなかった。宮田が、倭文子に失礼なことをしたので、倭文子が自殺する。それを悔いて宮田が逃げる……とすれば、倭文子の持物は全部残ってい、宮田の持物こそ全部無くなっていなければならなかった。