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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

二つの縁談

一

自分の軽率な間違いから、倭文子と自分との成立ったばかりの恋愛を、恐ろしい羽目に投げ入れたことを考えると、村川は悔恨と絶望との苦しみに、胸が張りさけるように痛んだ。

だが、どんな艱難でも来たれ、障害の上に障害は重なれよ、決して決して倭文子を放すものかと彼は心のうちで、幾度も誓った。

二つの縁談

一

「どうにかして倭文子に会いたい。」

村川は、一日中会社の事務をとりながら、考えていた。昨夜、ほとんど眠られなかったので頭がカサカサに乾いて、しびれるような疲労が全身に感ぜられた。

倭文子が動揺さえしてくれなければ結局どうにかなるのだ。倭文子を失いたくないから、すべてが恐ろしいのだ。村川は結局そこへ考えついた。だが、倭文子と会うことは、今の場合危険な冒険に違いなかった。彼女の傍には、恐ろしい番兵が、くっついているのだ。

世の中で、一番会いたいものと一番会いたくないものが、一緒にいるのだ。

五時の時計が鳴るのを聞いてから、村川は会社を出た。が、足がいつものように、大手町の停留場に向かないのだ。

小石川の家へ帰る勇気が、どうしても出て来ないのだ。帰りたいのは帰りたいのだが、書斎へ入ると、すぐ京子が飛込んで来そうなので、どうしても足が向かないのだ。