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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
四
「すぐお宅へお帰りですか。」
「いいえ。ちょっと銀座へ出まして。」
「あの私が、お送りいたしましょう。今、私も帰るところですから、自動車で銀座からお宅へ、お送りしましょう。」
「いいえ。それには及びませんわ。」
「いいじゃありませんか。たまにはあなたのような美しいお嬢さんを送らせて下さい。」
「いやな方。」
「ご立腹ですか。」
それほど、単純な京子ではなかった。こんな太刀打ちなら、どんな男性と立ち向っても、負けている彼女でなかった。
「そう。では送っていただくわ。」
「じゃ、そろそろ出かけましょうか。」
芸妓などとの相乗りには、あきあきしている今井は、こうした令嬢との相乗りに、新しい生活の昂奮を感じながら、京子を先に、買ったばかりの自慢のキャデラックに乗った。
四
自動車は、東京駅の前を斜めに、鍛冶橋にさしかかった。道路がわるいために、盛んに動揺するけれど、それが優秀な車体とクッションとのために、快い振動となって、身体に伝わって来る。ともすれば、人を肉感的にする振動だ。
今井は、かねてから京子の美しさに心をひかれていたが、妻があったときは、遊び人たる彼もそれを禁断の果だと思っていた。