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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
何という浅間しいことであろう。そしてあいにくにも乗り合いの人々に、一人の鉄拳を加えようとするものもいないのだ。
罹災民と貧民との区別を喋々と弁じている論客がいる。自分ら避難者に対して救恤などと感謝を強うるような語を用うるがだいたい気に喰わぬ。自分らは決して罪悪や過失によってこの境遇に落ちたのではない。どうで誰かが受くべき天災をたまたま自分らが受けたのだから、僥倖にして災を免れたものは二枚の着物を一枚脱いで自分らに渡すが当然なのだというような趣意だった。〔(『社会史研究』第一〇巻第三号八四頁「余白録」参照)〕説の当否は別問題として、一般国民、特に為政者や資産階級の人々の顧慮すべき問題だと思った。
汽車がはなはだしく後れて、時間表では二十時間余で京都へ着くべきはずのものが、二十四時間何がしを費して翌二十一日の夕方ともかく無事に京都へ着いた。
これより後十月七日跡始末のために帰京するまで、震災に関する記事なし。京都では到る処に物珍しげに実見談を喋舌らされたり、また時には自分で進んで聞かせたり、同じようなことを何度も何度も繰り返したに過ぎなかった。その間には実際体験したという人から、随分よい加減なことを聞かされていることの少からぬに驚かされたこともあった。