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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页
あまりのことに見るに見かねて注意したが、奴さん馬耳東風で一言の返事だにせぬ。昇降客はやむを得ずことごとく窓口から出入せねばならぬ。婦人や子供の痛ましさったらない。もし自分が今少し若かったならと思ってもみたが、今さら殴りつけるほどの元気もなく、乗り合いの人々も直接わがことでないので、誰一人手出ししようとするものなく、ただ口々にその不人情を罵るばかりだ。そしてその鬚紳士は罵られてもいっこう平気なのだ。法の届かぬところにはやはり社会的鉄拳政策が必要だと思った。
柔道着に小倉袴をつけた壮士風のもの、高貴織の単衣に錦紗のヘコ帯をだらしなく巻きつけ、金時計を光らした、デップリした若者、そのほかいろいろの風態をした五、六人連の、傍若無人に大言壮語している連中がいる。こんなのが新聞でよく見る不良青年とでも言うのであろう。無遠慮に、いや、むしろ大威張りで慰問品を受け取りながら、献身的に活動している少女や女子生達の批評をする。「姉さん此方へ向いてみねえ。」「ああ彼奴はヘチマじゃな。」「ここの愛国婦人会の奴らは紋付なんか着込んで気張ってらあ。」これが婦人達の満腔の同情に対する避難者の応酬だ。