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しんさいこうき

震災後記

喜田 貞吉

「社会史研究 第一〇巻第四号」1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,544 字 · 41 页

青空文庫

大体の応急手当も職人に委しておいて、今日いよいよ京都へ行く予定であったが、やっと徒歩連絡で通じていたはずの東海道線は、両三日来の豪雨で馬入川の仮橋を流されて、再び不通になったという。中央線の方も笹子隧道が崩れて塞がったという。とても行けそうにもない。

十時ごろから焼け残った帝大の史料編纂掛や人類学教室、さては上野の博物館などの見物に行く。博物館はかなり被害があったようだが、前両者はほとんど損害がないといってもよいくらいだ。大学は火事にだに遭わなかったならば、ほとんど無事であったのだ。残念なことをした。だいたい東京の地震は横浜や鎌倉、小田原方面のごとくひどくはなく、これを『安政見聞誌』などと比較してみても、その当時の江戸の地震ほどにはなかったらしい。ただこの度のは大火の惨害によってはなはだしく傷められたのだ。そして被服廠跡の惨状のごとく、一ヵ所に三万何千という多数の人々が、折り重なって焼死するというような、千古未曾有の大悲惨事をも生じたのだ。これが昔の江戸の町であったならば、また少くも水道の防火に依頼し過ぎることがなかったならば、かくまでにはならなかったはずであったと思うと、またしても近ごろの文明を恨まざるを得ぬ。