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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
春の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页
大原は夢でなきかと疑うばかり「だがしかし中川君ばかり承諾されても御本人のお登和嬢が何と言われたろう。最初の風向では少々心細かったが御本人も承諾されたろうか」中川「ウム、妹も別段に異存はない様子だ」大原「別段に異存はない様子だなんぞは少々不確だね。御本人が進んで僕の処へ来たいと言う位でなくっては不安心だ」中川「アハハ、なかなか御念の入る訳だ。しかし僕や本人が承知しても一応国の両親へ通知してその上に事を極めなければならん。国から返事が来た後に万事を相談しようが君もまだ病中ではあるし、気を付けて緩々養生し給え」大原「イヤモー全快だ、全くモー何の事もない。先刻までは身体の工合も悪くって起きるに懶かったが今の話しを聞いて病気が何処へか飛んで往った。気分も平日の通りだし、腹も急に減って来て平日のような米の飯が食べたくなった。自分ながら不思議のようだね」中川「アハハ現金なものさ。それがいわゆる精神感動だね、俄に戦争がその土地へ始まったために腰の抜けた大病人が我れ知らず立って逃出してそれなり病気が癒ったという事もある。精神感動ほど人の身体に偉大の働きをするものはない。