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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
春の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页
第三十 万年スープ
あの美質があるから僕は将来の大成を期している。大原君が常に心の礼という事を唱えていたが君も覚えているだろう。今の内は社会に制裁がないから幇間的文学や軽業的文学が跋扈しているけれども他日社会が規律的に整頓して文字を読まず精神を読むという時代になったら大原君の如き人が最も尊崇を受けるだろう。僕も及ばずながら大原君を助けてそういう人にしてみたいと思う。家庭に在りては良主人、社会に立っては好紳士として文学者の感化力を我邦は申すに及ばず、世界八隅へ波及せしめたいと思う。それにはどうしても良夫人を得させなければならん。その良夫人はお登和さんを措いていずくにか求むべきだ。どうだね中川君、僕の主意が解ったかね」と大原のためにまた勉めたりというべし。
第三十 万年スープ
小山のかくまでに勉めし甲斐ありて中川の心も漸く大原に傾けり「なるほどそういってみると大原君も馬鹿に出来んね。心の礼の説は僕も今に至って感心している。しかしこういう事は僕の一量見に行かんから先ず本人の心を聞いてそれから国元の親たちへも相談しなければならん」小山「それはごもっともだが君とお登和さんとが御承知なさればお国の方はどうでもなるだろう。