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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
春の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页
第十六 贈り物
書生「娘ならば先ず半襟位かな」大原「半襟を買って持って行こうか」書生「そうなさい、それが一番です」大原「しかし僕は半襟というものを買った事がない。どんなものを持って往って悦ばれるか訳が分らん。困りましたね」書生「では僕らがちょいと小間物屋へ走って良いのを一つ買って進げましょうか」大原「どうぞそうして下さい」と妙な処に援兵あり。
第十六 贈り物
さりながら不意の援兵は当にならず。書生連中二、三人物好きにも大原の依頼を受けて小間物屋へ赴きしが途中にて相談を始め「オイ君は大原のために上等の半襟を買って遣るつもりか。全体大原が女に向って野心を起すとは滑稽だね。僕の考えにはどうせ滑稽で成立っているからこの半襟も滑稽的の物を択んだ方がいい。僕らは大原に対して平生少し遺恨があるぜ。ナゼというのに大原は三度の食事を我々の三、四倍も食う。大きな飯櫃を一人で空にして汁なんぞは五、六杯もお更りをする。家の内儀さんが漏まいことか。この米の高いのに一人で四、五人前も食べられては勘定に合わない。といって永年下宿していらっしゃるお客様だし、副食物のお更りなら銭も取れるが飯の代を余計に貰う事も出来んといつでも愚痴ばかり言う。