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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
春の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页
第六十三 顔の色
自分一人が手数を省くために亭主や小供やお負けに自分の胃腸までがどれほど余計な手数をかけるか更に頓着ない。実に野蛮だね。文明の世に生れて文明の何物たるを知らんのだね。僕は世間の心ない人たちから折々そういう苦情を聞くがアア浅ましいと思って歎息するね。文明風の料理法はなるべく体外の手数をかけて体内の手数を省くにありという事を忘れてはならんよ」と頻に我が料理法を弁護する。
第六十三 顔の色
中川の説は言うべくして容易に行わるべからず。小山もなお反対の意見を抱き「中川君、道理上より言えばその通りに違いないが日本人の妻君は西洋人の妻君のように一日の仕事を料理の方へ向られない事情がある。一例を挙げれば西洋人は二週間に一度か三週間に一度の外風呂に入らない。日本婦人は大概毎日入浴して二時以上ずつも顔や手足を磨いている。それに日本の妻君は三日に上げず髪を結うという手数もある。だから自然と料理のことを嫌ってお化粧の方へ手数をかけたがる。西洋人の家へ往ってみると妻君はいつでも料理の研究かその話しをしている。日本人の妻君は寄ると障るとヤレ丸髷の形状が好いの、何処の髪結さんが結いました、私の髪結は下手ですから今朝結ったのをむしりこわしてまた外のに結わせましたなんぞと一日に二度も髪を結って騒いでいる人もある。