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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

春の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页

青空文庫

第二十 大得意

お登和「そうでございましょうかね」と容易に信ぜずして心に大原を軽んずる様子あり。折から表に「お頼申す、今日は」と大原の声聞ゆ。

○薩摩芋を弐分四角長さ一寸位に切りサラダ油かあるいは鳥の油にて揚げ紙の上に置きてその油を取りたる後味淋、醤油、砂糖等にてよく煮たるものへ鳥のソボロをかけて出すは上品にて味好き料理なり。胡麻の油にて揚げたる時は臭みを取るため湯にて洗うべし。

○鳥ソボロは鳥の肉を細末に叩き味淋、醤油、砂糖等にてよく炒り付けたるなり。

○鳥ソボロの代りに海老ソボロにてもよし。製法は鳥に同じ。また玉子の黄身の湯煮たるを裏漉しにしてかけるもよし。

○薩摩芋あるいは他の芋類を多食して胸の閊えたる時は昆布を食すべし。あるいは昆布茶を飲むも可なり。昆布は芋類を消化せしむるの功あり。

第二十 大得意

大原の声を聞きて妻君は座敷の方へ赴けり。お登和嬢も続いて立ちぬ。さりながら妻君の今の言葉が少しく気にかかりて足も前へ進まず。もしや妻君が我身をあの人に世話せんとする心にはあらぬかと気味の悪きように覚えて台所の口に立ったまま窃に座敷の様子を窺う。大原は携え来りし大風呂敷を大切そうに脇へ置き「奥さんお登和さんは此方に来ておいでですか」