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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

春の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页

青空文庫

第五十八 書画骨董

衛生思想が進歩したら我邦でも必ず銅分を含んだ食器を厳禁する事になりましょう。僕の家では決して青銅や銅の鍋を使いません。尽く西洋の鉄鍋ばかりです」と説明を聞いて妻君も気味悪くなり「では家でもそうしましょう、ねー貴郎」と我が良人を顧る。良人の小山少しく不賛成の顔色。

第五十八 書画骨董

主人の言葉理ありといえども今の世には急に行われ難し。客の小山さえ妻の勧告を悦ばぬ色あり「中川君、文明流の台所もいいが器物を買うのに金がかかって困るよ」と今人は誰もよくこの愚痴を言う。中川黙然として暫く小山の顔を眺め「君までがそんな事を言っているのか。妙な事を聞くが君の家の客室に応挙の鶏を描いた軸物がかかっていたね、あれは大層高価なものというではないか」小山「あれは僕の父が二百円である人から買ったが今売れば三百円以上になる。その外僕の家には周文だの雪舟だの殆ど千円近い名画が五、六幅もあるよ」中川「サア其処だテ。床の間へ名画を掛けておくのは何のためだ。一方からいえば粧飾のためかもしれない。粧飾は贅沢物だ、あってもなくても君や妻君の身体に何の関係もあるまいが、台所で使う道具に有害な毒分を含んでいたら毎日身体を侵害されるだろう。