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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

春の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页

青空文庫

第十五 昨夜の夢

○昆布と竹の子と煮る前に竹の子を皮附のまま昆布と共に長く湯煮て冷めるまで釜の中へ蒸らしておくと双方共に柔くなる。昆布なければ若布にてもよし。

○昆布は外の野菜および穀物類を消化させる功大なり。

○林檎のフライは林檎の皮を剥き心をとり薄く切り別に玉子と米利堅粉あるいはウドン粉へ塩と砂糖にて味附ける濃きころもを作り、それへくるみてフライ鍋にて揚げる。

○上等製の林檎フライは前文の品をブランデーと砂糖に一時間漬けおき、玉子の黄身と米利堅粉とを牛乳にて溶きかつねりて固くし、白身を泡立たせてそれへ交ぜるなり。油にて揚げる時最初は火を弱くして緩々揚げ後ち火を強くして卸すべし。

○珈琲のアクを抜くに玉子の白身を使って最初に珈琲の粉と交ぜて煎じれば殆ど透明な汁となる。

○ゼラチンを用ゆる代りに寒天を用うるもよし。然れども寒天は酸性なる故余り酸気の強きものは寄らず。

○寒天の酸性を中性にして用ゆる場合には少しく曹達を加う。しかし酸気のものには不可なり。酸気のものは曹達を沸騰せしむ。

第十五 昨夜の夢

思いつつ寝ればや人の見えつらん夢と知りせば覚ざらまじを、大原は昨夜の夢の現に残て独り嬉し顔に朝早く臥戸を出で洗面場に到てその帰りに隣室の前を過けるに、隣室に下宿せる大学の書生二、三人頻に大原の顔を眺てクスリクスリと笑っている。