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くいどうらく
食道楽
村井 弦斎
春の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页
大食家でも二、三年洋行して西洋食事に慣れると日本へ帰朝した時普通の人ほど食えない位に胃が小さくなる。だから大原君も習慣の付けようで大食が直るよ。大食が直れば脳の働きもモー少し良くなる。僕は大原君を後生畏るべき人物だと思う。あの通り正直で律義で自分から脳の鈍いのを言立て外の人より二倍も三倍も勉強するからああいう人が末に至って大成するよ。それに第一誠実で、親切な心があって無邪気で物堅いから良人に持ては女の幸福だね。才子肌の人や豪傑気取の人物は決して幸福な良人でない。そういう人物に限って自分の家庭を不幸悲惨の地位に置く。それでは社会に立って何の仕事が出来るかというに今までの不規律な乱世時代には僥倖の成功もあったろうけれどもこれから先の進歩した社会には才子や豪傑ほど無用な者はない。これからは品行方正で誠実に勉強する人物でなければ世に立つ事が出来ん。大原君の如き人物こそ最も望みが多い。僕は公平に考えてお登和さんのために適当な良人だと思う」と言う処一応の理なきにあらず。中川も幾分か心の動きけん「そうさねー、僕も妹の事については随分心を労しているがさて容易に極められん問題さ」