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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
明智はと見ると、彼の目も、思いなしか、異様にギラギラ光って見えるのだ。
急ぐ程に、いつしか町を離れた淋しい海岸に出ていた。静かとは云っても、流石に頬を打つ潮風。寄せては返す波の音。もうその辺には目印の五色の雪も残っていない。
見ると行手の丘にポッツリ建っている一軒家。大森の町を出離れて森ヶ崎に近い場所ではあるが、妙な所に思いもかけず、妙な洋館があったものだ。孤独好きな人の別荘か、画家のアトリエか、古風な建て方のささやかな木造洋館だ。
近づいて様子を窺うと、どの窓も密閉されているが、何となく怪しげな気配。それに今来た道を通っては、この家より外に行き所はないのだ。
警官は手別けをして建物をとり巻く。明智と二郎とは入口を叩いてさり気なく案内を乞う。中に人が住んでいる事は、ほのかに洩れる燈火によっても察しられるのだが、戸を叩いても返事はない。シーンと静まり返って、中では、目を見合わせた連中が、黙り込んで、外の様子に聞耳を立てている感じだ。
「感づいたのでしょうか」
「我々とは知るまい。ただ、場合が場合だから用心しているのでしょう」
暗闇に立っていること故大丈夫とは思ったけれど、二人は充分用心して、屋内から隙見されてもそれと気附かれぬ様、ドアのすぐ横に蹲まって様子を窺った。