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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

君にかかっちゃ、僕のいたずらなどは子供だましさ」

明智はこのお芝居が面白くてたまらぬという調子で、ニコニコ笑いながら、手にしていたピストルをポイと床の上へ抛り出した。

賊の手下が、素早くそれを拾い上げて、ポケットに入れた。

「オイオイ、そんなもの、大切相にしまい込んでどうするんだね。そいつは、君達の手品の楽屋で拾って来た、おもちゃのピストルだよ」

若者はそれを聞くと、一寸たじろいだが、何食わぬ顔で、

「手品の小道具がなくなっちゃ、明日から興行が出来ないからね」

とへらず口を叩いた。

「ところで、我々の勝負だが、この場の形勢は一体どちらに勝目があると思うね。君も満更ら馬鹿ではないのだから、その位の目先は利く筈だが」

明智は手下などは相手にせず、賊の首領に向きなおって、大胆不敵の応対を始めた。

「俺の方には武器がある。人質もある。だが君の方は空手だ」

賊が大様に答えた。

「この家をとり巻いている警官達を忘れた様だね」

「その連中が這入って来るまでには、妙子が死んでしまう。この娘の命と引換えなら、悪くない取引きだよ」

「ハハハハハ、嘘を云っても駄目だ。ホラ、君の顔はそんなに青いじゃないか。