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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

と、出会い頭に、一人の部下にぶつかった。

「オイ、三次じゃねえか。どこにいたんだ。みんなで大探しをしているんだぜ」

淡い檣燈の光で、おぼろな姿を認めて、相手が叫んだ。

「ウン、俺はここにいるんだ。お前みんなを呼び集めて来な。三次が見つかったって」

声も違う、云うことも変だ。併し相手は何も気づかず、いきなり大声で怒鳴った。

「オーイ、みんなア、三次がいたぞオ。ここにいたぞオ」

やがて、ゾロゾロ集って来た七人の前科者。みんな酔っぱらっている中に、比較的正気な奴が、ふと明智の姿に疑いを起してツカツカと近づいて来た。

「三次だって、オイ、こんな三次があるもんか。こいつ一体どこのどいつだ」

「成程、三次じゃねえ。ヤイ、貴様は誰だッ」

人違いと分ると口々にどなり初めた。

「僕は明智小五郎っていうのだ」

明智がおだやかな声で答えた。

「ワア」というどよめき。七人のものは、油断なく身構えた。

「みんな、手向いすると、うちますよ」

明智のうしろから、文代がピストルを構えて、姿を現わした。

「や、文ちゃんじゃねえか。これは一体どうしたというのだ」

酔のさめ切らぬ一人が、頓狂な声を立てた。