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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

七人の奴は、蛇に見こまれた蛙の様に、ひっそりと静まり返ってしまった。

管々しく書くまでもない。文代のピストルにおどかされながら、彼等は瞬く内に、一人一人、身動きもならぬ様に縛り上げられてしまった。

明智は捕虜どもをその部屋に締め込んで置いて、再び元の首領の部屋へ取って返した。

来て見ると、源造をとじこめて置いた部屋では、恐ろしい騒ぎが始まっていた。ドアが風をはらんだ帆の様にふくらんで、メリメリメリメリと物凄い音を立てている。激怒した猛獣が、怒号しながら檻を破ろうとしているのだ。

「アラ、どうしましょう」

父ながら、余りの恐ろしさに、文代は明智の腕にすがりついて、悲鳴を上げた。

「構いません、疲れるまで、やらせて置きましょう。決して心配することはありません」

だが、果して心配しなくてもよいのだろうか。見よ、ドアの鏡板は已に破れたではないか。メリメリ、メリメリ、それに勢を得た猛獣は荒れに荒れて、とうとう扉に出入り出来る程の大穴をあけてしまった。

アッと思う間に、その穴から、源造の身体が、鉄砲玉の様に飛び出して来た。明智が文代の手からピストルを取って身構える間もあらばこそ、悪魔は巨大な蝙蝠の様に、風を切って甲板へと飛び出した。