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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
そいつの片割れが発見されたとあっては、昂奮しないではいられぬのだ。
明智は、さい前波越氏に教えた通りの道順を、繰返した。併し、妙子には裏の窓から入れとは云わなかった。
「その石門を入ると突当りに玄関があります。ドアを押せば開く様になっています。あなたは、一人でそのドアを入って、廊下を真直に歩いて行くと、開け放った広い部屋に出ます。その部屋の右側に、緋色のカーテンが下っている。カーテンの向側には、別の小部屋があって、電燈がともっています。あなたは、緋色のカーテンの合せ目を開いて、そっと中を覗けばよいのです。そこに犯人がいるのです」
何という奇妙な方法だろう。妙子も波越警部と同じく、なぜそんな廻りくどいことをするのかと、不審を抱かないではいられなかった。
「犯人を見ようと思えば、今僕の云った順序を、完全に守って下さらねばいけません。若し間違うと、非常に困る事が起るのです」
明智は更らにもう一度、空家への道順と、隙見の方法を繰返した。
「でもあたし、何だか気味が悪うございますわ。あなたとご一緒に行けるといいのだけれど」
「それは駄目です。あるトリックによって、犯人をその部屋へおびき寄せるのが、僕の仕事なのです。