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まじゅつし

魔術師

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页

青空文庫

妙子は怪賊奥村源造の実の娘です」

「え、そんな馬鹿なことが。…………」

「イヤ、お疑いなさるのも無理はありません。併し、それは僕が調べ上げた間違いのない事実です。生れたばかりの赤ん坊が、病院で取り替えられたのです。しかも、その取替えは、奥村源造の深い企らみであったのです。彼はある看護婦を買収して、偶然同じ頃生れた、自分の娘と、あなた方の本当の妹さんとを、ひそかに取替えさせたのです」

「エ、エ、すると、若しや、あの文代という賊の娘が……」

「そうです。文代さんこそ、あなた方の血を分けた妹さんです。これには確かな証人があります。当時の看護婦が未だ達者でいるのです」

「併し、なぜそんな恐ろしい真似をしたのです。僕には理由が解りません」

二郎が口を挟む。

「源造の恐ろしい復讐心です。彼はこの取替え子によって、我が実の娘を玉村家の人として成長させ、物心つく頃になって、ソッと親子の名乗りをとげたのです。そして、復讐事業の手助けをさせたのです。実に恐ろしい企らみではありませんか。あなた方が真実の妹として愛していた、あの妙子さんこそ、復讐鬼の美しい廻し者であったのです。実の子が敵の家庭の一員と信じられている、悪魔にとってこれ程好都合なことはありません」