轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
人々は咄嗟の場合、深くも考える余裕を持たなかったけれど、あとになって思い合わせば、此殺人には、奇妙な予告や、全く出入口のない、密閉された部屋を、犯人はどこから這入りどこから逃げたかという様な点を別にしても(それらの点が、この事件全体を妖異不可解ならしめた、著しい特徴であったことは勿論だが)更らにその外に、二郎が耳にした物悲しき横笛の音、今又この死体を飾る、可憐なる野菊の花束、これは果して何を語るものであろう。若しや犯人は、我れと我が殺害した死人を弔う為に、横笛の弔歌を奏で、野菊の花束を贈ったのではないだろうか。だが、どこの世界に、その様な酔狂な手数をかける犯罪者があるであろう。
余談はさておき、兎も角も死体を調べて見なければならぬので、二郎は扉の破れ目から手を差入れて、鍵を廻し、扉を開いて室内に這入った。巡査、召使等も後に従った。
二郎は何気なくツカツカと死体の側へ近づいて行った。そして、血まみれの足の所に立って、寝室との境の壁に隠れていた、死体の上半身を一目見ると、どうしたのであろう、彼は何か木製の人形みたいな恰好で、そこへ棒立ちになってしまった。