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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

後には揚げられた砂煙りが、薄黄色く立ち迷い、晴れた大空をひとしきり、曇天にしたばかりであった。

「いや面白い奴らだった」

「おかげで我ら眠気ざましをした」

武士たちはかえって朗らかでさえあった。

が、それから半刻経った時、一つの意外の事件が起こった。

町の方から砂塵を蹴あげて、五十人あまりの異様な一団が、この大戸へ来たことであった。

いずれも腹巻や籠手脛当てをし、槍や長柄などをひっさげた、雄々しく物々しい連中であったが、しかしそれらは武士ではなく、禰宜、修験者、陰陽師、屠児、人相見、牙僧、圉人、――といったような輩であり、そうして例の鬼火の姥に、扈従している眷族であった。

先頭に鬼火の姥がいた。

例によって白の行衣を着、一本歯の木履をはき、長目の御幣を持っていた。

「範覚はいぬか、範覚範覚!」

と、大木戸まで来るとけたたましい声で、こう姥は呼ばわった。

群集を相手になお範覚は、この時も駄弁を弄していたが、

「姥か、これはこれは、あわただしいことで! ……町に事件でも起こったのか※(感嘆符疑問符、1-8-78) ……この大木戸だけは大丈夫じゃ! ……範覚控えている以上、宮方に属した奴ばらの残党、一人として通すことでない! ……土岐頼兼の妾や小伜、目付け次第ふん縛る! ……ここばっかりは大丈夫じゃ!」