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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「おのれら来い! おのれら続け!」
一本歯の木履宙に飛ばせ、真一文字に走り出した。
範覚をも雑えて五十余人の眷族、一斉にその後を追っかけたが、ひとりみじめなのは範覚であった。
(呆れたね、なんということだ! クマノカワにシシノカワと! その中に千寿と朱丸とがいたと! ……ふーん、呆れた。いや呆れた! ……ほんとだとすると――ほんとらしい! ……とすると俺阿呆かなア)
酔いなど、すっかり醒ましてしまった。
その日も暮れて夜となった。
伏見街道を五里ほど行った地点の、街道を外れた広大な藪地に、うごめく一つの人影があった。
盲目の土岐頼春であった。
俄盲目の悲しさに、道に迷って来たものらしい。
この藪地は四方十里、それほどにも渡る広大なもので、沼あり河あり丘あり谷あり、それを蔽うて松、杉、柏、桧、からまつ、櫟、栗、白楊などの喬木類が、昼は日光、夜は月光を遮り、そうして茨だの櫨だの水松だの、馬酔木だの、満天星だの這い松だのの、潅木類は地面を這い、鷺、鶉、雉、梟、鷹、鷲などの鳥類から、栗鼡、鼡、※、猯、狐、穴熊、鹿などという、獣類を住ませ養っていた。雨の夜は腐木が燐火のように燃え、白昼沼沢地の芦の間では、蟒が野兎を呑んでいたりした。