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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
という、そういった強迫観念であった。
その強迫観念が彼をして、この漂泊、この流浪の、果てなき旅へ出したのであった。
(このままでは俺は死ぬことさえ出来ない。……おお死ぬことさえ出来たならば! ……即座に死ぬ即座に死ぬ!)
しかしこのまま自殺したならば、あの世において頼兼や国長に、どうして合わせる顔があろう!
(浄罪!)
と彼は思うのであった。
(安心して死んで行けるまでに、この世で浄罪しなければならない!)
何をおいても強迫観念から――心耳と心眼とにつきまとっている、恐ろしい形と恐ろしい声の、それから醸し出されている――強迫観念から遁がれなければならない!
こう彼は思うのであった。
彼は大藪地をさまよって行った。
が、どうしたら救われるか? 身と心の置き所を、一つ所に保つことが出来るか?
(許されるより他にはない!)
だがそれは誰が許すのだ?
この一族への裏切り者の俺を、この神の界への裏切り者の俺を!
誰がいったい許すのだ?
すると国長が最後に叫んだ、一連の言葉が思い出された。
「現世において安心を得、死後成仏せんと思わば、神の界に属する御一方より、許すの一言承われ!」