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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
……近来家出が流行ると見える。……たいして楽しいことでもないに」
「土岐、多治見の郎党ばらは、一人のこらず討ち死にしてしまった。……で、どうにも宮方一味の、公卿や武士――豪族の名、ほとんど知ることが出来ないのじゃ。……そこでせめても頼兼の妾、千寿などでもひっ捕え拷問いたしたら知れようかとな。……」
「ところがそいつに飛天夜叉めが附いた」
「そうして大木戸を脱けられた」
姥はジロリと範覚を睨んだ。
「ウフ」
と範覚は首をすくめ、さもテレたような様子をしたが、
「そいつを云われると身が縮むて。……が、千寿や朱丸を籠めて、この大藪地へ追い込んだ上は、飛天夜叉にも遁がれられまい。……どっちみち千寿や朱丸めは、姥の手へはいったというものさ」
「さあそうなってくれればよいが」
「とにかく今はこうなんだな、千寿か朱丸を手に入れるか、頼春や早瀬を捕えるか、連判状を目付け出すか、そのうち一つでもとげることが出来たら、宮方一味の公卿や豪族の、確実の名を知ることが出来、六波羅殿には安堵が出来ると。……」
「そうじゃよそうじゃよ、そういうこととなるのじゃ」
「ところでこれからどうする気じゃな? ……こう飛天夜叉めと睨み合っていてよ」