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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
誰に頼まれてやったのでもなかった。自分の好きからやったまでであった。
――土岐頼兼の妾と伜とを、いつ捕えて拷問にかけ、宮方一味の輩の、誰々であるかを調べるそうなと世間の噂に立った頃には、もうその人達は高倉あたりの、その住居から消えていた。
桂子が連れ出して、かくしたからである。
自分の好きでやった所業であった。
で酔狂とも云われるだろう。
「酔狂などとは勿体ない」
と、千寿は涙を浮かべながら云った。
「お助けなくばもう今頃は、わたくしども親子は六波羅の手に……渡され渡って恐ろしい目に……」
「そうねえ」
と桂子もこれには頷いた。
「情けしらずの六波羅に渡って、糾問されたかも知れませぬねえ。……が、それでは神も仏も、この世にないと申すもの。……そうあってはなりませぬ」
「わたしたち親子にとりましては、あなた様はまことに神か仏……でもこのように鬼火の姥とやらに、四方をかこまれてしまいましては……」
「アッハッハッ、大丈夫で」
こう云ったのは右衛門であった。
「われらの大将……いや姫君じゃ……桂子お姫様の力量技倆を、すこしでもご存知でございましたら、そのようなご心配はなさいますまいよ。