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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
水精の群れ
「や、姥か! ……少しばかり邪魔な」
「範覚ウ――ッ」
と姥は走り寄った。
「テ、手に入れたわ、レ、連判状オ――ッ」
「ホ、ほんとかア――ッ」
と首を延ばしたが、
「娘は?」
と尚もキョロキョロし、
「ホ、ほんとかア――ッ、偉い偉い! ……が、娘は※(感嘆符疑問符、1-8-78) 娘は娘は※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
この時傍らの大槻の木の、てっぺんあたりから雪のように白い、布のようなものが舞い下りて来た。
水精の群れ
雪のように白い布のような物は、鬼火の姥を上から蔽うた。
「ワ――ッ」
「ギャ――」
と、布のような物は、すぐに宙へ舞い上がった。
「連判状を取られた――ッ」
「ケダモノ――ッ」
と、範覚は槻の木の梢の、猩々を目掛けて金剛杖を投げた。
「ギャ――ッ」
と猩々は悲鳴を上げ、もんどり打って地へ落ちてた来たが、折られた片脚を引きずって、また槻の木へ掻き上がり、枝から枝、梢から梢へ、渡り伝わり姿を消した。
「取られた、連判状を! ……? あッ、あッ、取られた――ッ」
姥は地面へペッタリと坐り、阿呆のように空ばかり仰いだ。
戦いはしかしこの大藪地の、あなたに行なわれているらしく、喚声や剣戟の烈しい音が、嵐か怒涛のように聞こえて来た。