轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

さっきの娘が死んだかのように、あおむけに床に仆れていた。

娘の後脳を膝の上にのせて、一人の男が坐っていた。

その横に竹の杖があった。

男が顔を上向けて呻いた。

「麻痺れるわい、身も心も!」

それは盲目の顔であった。

早瀬は思わず叫ぼうとした。

しかしようやく自分で堪えた。

(あの男だ!)

と、瞬間に思った。

(この嬰児の母親を殺した『裏切り者』と宣る男だ!)

(どうしよう! どうしよう!)

その男は、またも一人の女を――娘を犠牲にしようとしている!

(この子の母親の敵を討ち、あの娘の危難を救ってやりたい!)

(どうしよう! どうしよう!)

夢中で腕へ力をこめた。

嬰児が腕の中で苦しそうに動いた。

ギョッとして手をゆるめた。

(泣き出されては大変だ!)

この時胸を押されたため、苦しくなったか懐中の蝮が、五寸ほど体を外へ出した。

(そうだ!)

と、早瀬は突嗟に考えた。

(『裏切り者』は武術の達人、わたしなどには討てそうもない。この蝮を部屋へ放してやり、毒のある歯で噛ませてやろう)

彼女は蝮の頭を撫で、念ずるように口の中で云った。

「子供よ、お前、お願いします! 部屋の中へはいって、あの男に噛みついておくれ!」