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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

すると、彼方から声が聞こえた。

「贄のハダカって何んでござんす?」

「範覚さん、そんな物アこっちにゃアねえ」

「黙れ範覚!」

と、範覚は怒鳴った。

「文句を云わずとヤイヤイ範覚、贄のハダカ持って来オ――ッ」

笑う声が向こうから聞こえ、

「範覚さんは、お前さんなんだよ」

「お前さんこそ範覚さんなんだよ」

「そうだ」

と、範覚は足踏みをした。

「俺こそ金地院範覚だ! ヤイヤイ範覚ハダカ持って来――ッ」

「範覚ウ――ッ」

と、姥が壇上から叫んだ。

「贄釜の中へ贄を入れろ――ッ」

「ちげえねえ!」

と、範覚は答え、

「贄釜の中へ贄を入れろ――ッ、……贄持って来オ――ッ、犬、狐、猯、猫、兎、贄のハダカを持って来オ――ッ」

ドッと笑う声が向こうでしたが、犬と狐とが莚の間から、こっちの部屋へ投げ込まれた。

二人の屠者はすぐに飛びかかり、四足をしばられた二匹の獣を、釜の傍へ引きずって来た。

獣は悲鳴し体をもがいた。

しかしすぐに動かなくなった。

二本の庖丁が獣の胸に、柄を上にして立っていた。

やがて臓腑が掴み出され、釜の中へ投げ込まれた。

釜の横に積まれてある薪の束が、つづいて炉の中へ投げ込まれた。